相棒 Season4
第4話「密やかな連続殺人」
主演:水谷豊、寺脇康文
ゲスト:小日向文世、高橋一生 他
初放送は2005年
「相棒」シリーズは再放送で時々観てます。
静の右京(でも切れたらコワい)、動の薫のコンビの、息が合ってるような、妙にすれ違ってるようなデコボコぶりが楽しいです。
基本、殺人事件で、深刻な話のハズですが、(右京さんと比べて)間抜けな捜査一課の面々とのやり取りなど思わず笑ってしまう事が多いのです。
この辺のとこは「刑事コロンボ」とか「古畑任三郎」に似たような感覚です、か、ね...。
以下ネタバレ注意で。
薄暗い部屋。
テレビのチャンネルを変え続けているが、見てはいない...。
女の悲鳴、断末魔の叫び、泣き声。
悪魔を描いた古い絵、不気味なデッサン。
男が、何かを繰り返し呟いている。
vim patior....vim patior....vim patior........
明りに浮かび上がる顔は...。
屋台で飲んでいた、亀山薫(寺脇康文)は、引退した刑事である屋台のオヤジからある迷宮入り事件の被害者の遺留品を預かる。
それは片方だけのピアスだった。
事件のことを忘れないように遺族から譲り受けたものだった。
翌日、川で、刺殺されたOLの遺体が見つかる。
杉下右京(水谷豊)は、被害者の耳に片方しかないピアスに疑問を持つ。
亀山は、簡単には外れるはずのないピアスがないのは犯人がはずしたのではないかと考える。
「あなたがそう考えるのには何かヒントがあるのではありませんか?」
右京に昨夜預かったピアスを見せると、何か関連があると、13年前の事件を調べ始める。
13年前の事件でピアスがなくなっていることは、犯人だけが知る事実として、非公開となっていた。
模倣犯ではなく、同一犯の可能性が高い。
被害者はいずれも若い女性で、暴行されていないことから「快楽殺人」と推理する右京。
だが、快楽殺人者が13年も犯行の間隔をあけているとは考えにくい。
「意外と間隔は開いていないのかも知れませんよ」
全国の警察に未解決の「片耳ピアス殺人事件」の情報を問い合わせる2人。
1980年代から、数年おきに全国で10件の同様の事件があったことが判明する。
被害者は若い女性、殺害方法はバラバラ、ひとつの県で1件のみ、そしていずれもピアスが片方なくなっていた。
県境を越えれば、情報が共有されず、殺害方法を変えれば連続犯とは思われない。
警察の盲点を突き、長年にわたって殺人を楽しんでいる犯人。
だが、広域捜査の要請は却下される。
「報告の義務は果たしました...あとは、いつものように、ですね」
13年前の事件には、容疑者がいた。
目撃証言などから予備校講師の村木(小日向文世)が逮捕されていたが、証拠不十分で不起訴となっていた。
手始めにその男の家を訪ねると、ふらふらとよろけながら男が飛び出してきた。
「...疑われるのはもう嫌だ」
泣きながら右京にすがりつく男は、手首を切り血だらけだった。
捜査一課の刑事が追いかけてくる。
「なんでおまえらがここに?」
右京の推理をもとに、先回りした捜査一課だったが、自殺未遂をされてしまう失態を演じていた。
警察病院で手当を受けた村木を迎えに妻・順子(山下容莉枝)が現れる。
いきなり殴りつけ、鞄で打ちのめし、足蹴にし、罵倒する妻。
「死ねるもんなら死んでみなさいよ...死ねないくせに」
されるままに床に這い蹲る男。
「さあ帰りましょう」
一転優しく囁くと、助け起こし、足の不自由な男を支えるように出て行った。
呆気にとられる一同。
小日向さんは、事故の後遺症で体が不自由な男の役。
本当にあっちこっち骨がグズグズ砕けたり、筋が切れたりしてるみたいによれよれです。
右京に泣きつくところや、奥さんに打ちのめされてるところでは、情けなさ全開ですが、一転、取り調べを受けていると思われるシーンでは、不気味な雰囲気です。
村木の妻に付き添っていた男、安斎(高橋一生)は、村木の主治医医の助手だった。
村木と奥さんの奇妙な関係について訊ねる右京と亀山。
13年前の事件後、疑いは晴れたものの、精神的に不安定になった村木を8年前から診ているという。
5年前には交通事故に遭い現在のように不自由な体になった。
「これは何かの捜査ですか?」
これ以上自分の立場では、患者のプライベートなことは答えられないと言う。
主治医の精神科医の内田に話を聞く約束をする。
翌日、村木の主治医・内田(奥貫薫)の話を聞く右京。
「支配と隷属」の関係にある村木夫妻は、傍目にはエキセントリックだが、本人達には必要不可欠なコミュニケーションだと。
犯罪心理学が専門という内田に、今回の事件を分析してもらう右京。
普段はおとなしくて真面目な男、出張や転勤で日本中をまわっている可能性がある。そして、本人にしか分からない印を残すか記念品を持ち去っていると。
持ち去った物が、ピアスだったら、と右京が問うと、それは大きな意味があると。
ピアスは耳から悪魔が入り込まないように守る意味がある。それをはずす行為は相手を無防備にする、つまり象徴的に相手を征服したことになると。
村木の妻は非協力的で、薫や伊丹も罵倒する。
「あんた、バカ?」
疑われる前の村木は人気の予備校講師で全国を飛び回っていた。
調べてみると、東京以外の事件は村木の講義日程と完全に一致していた。
今回の犯行の殺害・遺棄現場が見つかる。
橋の上から投げ落としたと思われるが、事故で体の自由の利かない現在の村木には今回の犯行は不可能。
動機も不明。共犯者がいる?
状況証拠は村木の犯行と思われ、偶然とは考えにくい。心証では村木はクロだが、状況証拠では逮捕できない。
物証、持ち去られたピアスをまだ持っているはずだと、村木の自宅を家宅捜索する捜査一課。
片方だけの7つのピアスが見つかる。
証拠写真とつきあわせると、ぴったり一致。
だが、気がつくと村木がいない。
部屋を抜け出した村木はエレベーターで上に上っていく。
慌てて非常階段で追いかける、捜査一課の面々。
屋上の端に不安定に立つ村木を見つける。
「おい、危ない」
「こっち来い」
「落ち着け」
杖をつきふらふらと立つ村木。
妙に落ち着き払って超然としている。
「私は捕まらない」
駆けつけた、右京が説得する。
「村木さん、落ち着きませんか」
「....vim patior.....vim patior....vim patior,,,」
さっきまでの、弱々しげな様子が一変、不敵な薄笑いを浮かべている。
「礼を言わせてもらうよ。20年以上も警察は私を捕らえることができなかった。おかげで随分と楽しませてもらった。10件全部私がやった。この手でね。」
薄笑いを浮かべる村木。
「動機はなんなんだ!」
「動機?忘れたな...そもそもこれは不治の病なんだ誰にも治すことはできない。」
「ふざけるなこの野郎!理由もなくなんの罪もない人を殺したっていうのか!」
いきり立つ薫を右京が制する。
「ああ。その通りだよ。お前達には絶対に分からないだろう、我々のような人間の存在は...。」
再びつぶやき始める。
「....vim patior.....vim patior....vim patior,,,」
「あなた!」
村木の妻が駆けつける。
「お前もほめてくれるだろ?」
「お願い、行かないで...私たち死ぬまで一緒でしょ」
「約束を守れないのは残念だが時間が来たようだ...繰り返すが、お前達に私は裁けない。私は善悪を超越した存在なのだ。」
「ふざけるな!」
いきり立つ薫。
「捕まるくらいなら、自分で終わりにしてやる。」
黒い不気味な雲がわき上がり、風が吹き、稲光が光る。
村木は杖を放し両腕を広げ飛び降りる。
駐車場に落ちた村木からまるで羽のように血だまりが広がる。
つづく...。
なんなんじゃこりゃ(笑)「相棒」ですよね...。
まるで「Xファイル」か「ミレニアム」。
お空のワラワラした黒雲や、稲妻、稲光、さらに投身自殺した男の血だまりが悪魔の羽のように広がったり、って、オカルト風味たっぷり。ついでに落ちた駐車場の番号が「13」って出来過ぎ。
高圧的態度の村木の妻も変人すぎる(右京さんに「あんた」なんて言う人滅多にいません...)
もっとおかしいのは精神科医の内田。「お前を征服してやるぞ」って右京さんに迫ります。
印象は強烈だけど、小日向さんの登場場面は意外と少ない...。
番組冒頭の30秒くらいと、13年前の事件当時の走り去る男(これは小日向さんでないかも...顔が見えません)と、取り調べを受けていると思われる場面、手首を切って飛び出して右京に泣きつくところ、奥さんに殴られ叩きのめされるシーン(ここは繰り返し同じ場面が使われる)、「警察が来た」と奥さんに電話するところ、証拠のピアスが見つけられたのをうかがって逃げ出すところ、そしてラストの屋上。登場時間は合計で5分強くらいかも。
しかし屋上のシーンは圧巻です。
静かに語りますが、やたら怖いです。
微笑みを浮かべつつ、完全に逝ちってゃってます(笑)
CG(?)の怪しい黒雲とか、稲光とか要らなかったんではないですか。
小日向さんの静かな熱演が勿体ないです。
後編も楽しみですが、村木死んじゃってるのに小日向さんどうやって登場すんでしょう。まさかあれで死んでないとか(笑)言ったら「相棒」じゃなくて他の番組ですよ。
以下蛇足。
小日向さん演じる、快楽殺人者・村木重雄が番組冒頭から、不気味に呟く「vim patior」はラテン語で「(私は)抑圧されている」と言う意味。
これは、一見、妻との「支配と隷属」関係にある村木の支配されている立場のことのように思えるが、意味しているのは「地獄」。
平たく言えば、「私は地獄にいる」つまり、「私は悪魔」...。
黒魔術で呼び出された悪魔が憑依した者(時に死体や生け贄)を通して呟くのが「vim patior」。
こんな事、予備知識として、知ってる物好き(笑)は日本には余りいない気がするが、番組の中で全く説明されてません。
悪魔除けとなるピアスの意味はシツコく繰り返してるのにエラい片手落ち...。
そう言えば「海をゆく者」のロックハート氏(実は悪魔)は、シャキーにこれから2人で行く「地獄」のことを、冷たく深い海の底の更に深く、暗く狭い所で、閉じこめられたらもう死ぬと思うが、絶対に死なない、その苦しみが永遠につづく所だって語ってましたねぇ...。
そして「私はそこに居る」って、とっても悲しそうでした。
↑つまり「vim patior」です、ね...。
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sent from W-ZERO3
2010年12月4日修正:物凄い(約150ヶ所!)文字化けで意味不明になってました
他の投稿は大丈夫かな…。